同じ失敗を、何度も繰り返してしまう
「もう二度としない」と決めたはずなのに、また同じことをしてしまう。
同じような人を好きになり、同じような場面で怒り、同じような後悔をする。
意志が弱いからだと、自分を責めていませんか。
本当は、そうではないかもしれません。
繰り返してしまうのは、意志の問題ではない。
「いつもの自分」に、戻ってしまうだけ。
決意だけでは、なぜ変わらないのか
人は、決意すれば変われると思っています。
固く心に誓えば、次こそは違う自分になれる、と。
けれど、現実はそううまくいきません。
最初の数日はうまくいっても、氣づけば元のパターンに戻っている。
ダイエットも、早起きも、人との関わり方も、同じことの繰り返し。
これを「自分は意志が弱い」と片づけてしまうと、苦しいだけで、何も変わりません。
なぜなら、問題は意志の強さではないからです。
あなたが動かせるのは、舵だけ
私たちは、自分のことを「頭で考えて行動している」と思っています。
けれど実際には、行動のほとんどは、もっと奥のほう――自覚されない深い層から、自動的に生まれています。
近年の脳科学では、人の判断や行動の多くが、意識にのぼる前にすでに始まっていることがわかってきました。「自分で決めた」と感じる少し前に、脳はもう動き出しているのです。
これを、海をゆく一隻の船にたとえてみます。
あなたが意識的に動かせるのは、実は船全体のうち、舵だけです。
この舵が、顕在意識――表面の「考える自分」です。
「右へ行こう」「変わろう」と決めて舵を切るのは、いつもこの小さな舵の役目です。
舵を切っても、大きな船はすぐ曲がらない
ところが、舵の下には、巨大な船体があります。
この船体が、潜在意識です。
これまで積み重ねてきた習慣、記憶、感情のパターン――そのすべてが、この船体の重さになっています。
そして、舵を切っても、大型船はすぐには曲がりません。
「右へ」と決めても、船体の慣性が、しばらくはまっすぐ進ませようとする。
決意してもすぐ変わらないのは、あなたの意志が弱いからではなく、潜在意識という船体が、それだけ大きく、重いからなのです。
小さな舵が、巨大な船体を動かすには、時間がかかる。それは、ごく自然なことです。
船は、海に浮かんでいる
そして、もう一つ大切なことがあります。
その船は、海の上に浮かんでいる、ということです。
この海を、集合意識と呼ぶことができます。
私たち一人ひとりの船は、別々に浮かんでいるように見えて、実はみな、同じ一つの海につながっている。
誰かの船が立てた波が、巡り巡って自分の船を揺らす。私たちは、思っている以上に、見えないところで影響し合っているのです。
そして海には、流れがあります。潮が満ち、引いていく。
その海を、地球が抱き、地球は宇宙の理で動く
では、その潮の流れは、どこから生まれるのでしょうか。
潮の満ち引きをつくっているのは、海そのものではありません。
月と、地球という、もっと大きな存在です。
海は、地球に抱かれ、その大きなリズムの中で動いている。
この地球にあたるものを、超意識と呼んでもいいかもしれません。
そして、その地球でさえ、自分勝手に動いているのではありません。
太陽のまわりを巡り、月を従え、季節を生む――地球もまた、宇宙の理(ことわり)という、もっと大きな法則の中で動いています。
舵(顕在意識)があり、船体(潜在意識)があり、それらが浮かぶ海(集合意識)があり、海を抱く地球(超意識)があり、その地球すらも従う宇宙の理がある。
私たちは、この大きな入れ子構造の中で、生きているのです。
逆らっても進めるが、ひどく疲れる
もちろん、こう言うこともできます。
「現代の船は、エンジンがある。潮にも風にも逆らって、力ずくで目的地まで進めるじゃないか」と。
その通りです。意志の力でエンジンを全開にすれば、流れに逆らってでも、たどり着くことはできます。
けれど、それは燃料を大量に燃やし続ける、無理のある進み方です。
たどり着けはする。でも、ひどく疲れるし、船は軋む。
意志の力だけで現実をねじ伏せようとする生き方は、これに似ています。結果は出せても、いつも消耗している。
一方、船体(潜在意識)が整い、海の流れ(集合意識)と調和し、地球の大きなリズム(超意識)に、そして宇宙の理に委ねたとき。
船は、自分で漕ぐよりはるかに軽やかに、進むべき方へ運ばれていきます。
「やろうとしないのに、なぜか物事が進む」という感覚は、このとき訪れます。
変えるのではなく、整える
同じ失敗を繰り返してしまうのは、あなたの責任感が薄いからでも、能力が低いからでもありません。
小さな舵だけで、巨大な船体を、流れに逆らって動かそうとしているから、疲れて、元に戻ってしまうだけなのです。
だから、順番を変えてみてください。
力ずくで「変えよう」とするのをやめて、まず船体を、そして自分と海との関係を「整える」。
奥が整い、流れと調和してくると、不思議なことに、力まなくても選択が自然と変わり始めます。
変化は、たいてい静かにやってきます。
劇的な決意の瞬間ではなく、整った状態が続いた先に、いつの間にか別の自分になっている。
繰り返しから抜けるとは、強くなることではなく、整って、大きな流れに乗ることなのかもしれません。